皆さん、ひげ博士じゃ。マクロファージは体に侵入する細菌やウイルスだけでなく、生体内で出来る不要な細胞や物質を除去している自然免疫の要の細胞じゃ。通常もっとも多く除去しているのは死んだ自分の細胞じゃが、アポトーシスした細胞表面の脂質層にはフォスファチジルセリンが発現してくる。これが“Eat me signal (私を食べて!)”としてマクロファージに認識され、その結果、マクロファージに貪食され、除去されておる。
一方、この逆の“Don’t eat me signal (私を食べないで!)”があるのをご存知かな?代表的なものはCD24,CD47, PD-L1などの細胞表面にあるタンパク質じゃ。白血病や固形がん等の細胞ではこれらがたくさん発現しており、マクロファージからの貪食を回避していることが知られておる。
これを逆手にとって、この貪食回避シグナルを阻害することでマクロファージに貪食され、がん細胞が除去される“マクロファージチェックポイント阻害がん治療”が研究されておる。中でも、抗CD47抗体は日本でフェーズ3のヒト試験が急性骨髄性白血病で行われているのじゃ。
マクロファージチェックポイント阻害による細胞除去療法は、オブジーボのような免疫チェックポイント阻害薬とは異なり、一過性の抗体療法で貪食効果の増進が期待出来るので、比較的副作用が少ない治療法になるのではないかとわしは考えておる。今後が楽しみ治療法じゃな。
参考文献:
Nature. 2019 572: 392-396.
PLoS One. 2015 10(9): doi: 10.1371/journal.pone.0137345.
PNAS. 2022 119:https://doi.org/10.1073/pnas.2109923118
出典:特定非営利活動法人自然免疫ネットワーク発行ニュースレター