皆さん、ひげ博士じゃ。よくご存知のようにLPSはトル様受容体(TLR)-4を介して情報を細胞に伝えておる(TLR-4の発見は2011年のノーベル医学生理学賞になったことは以前紹介済)。今回はTLR-4がLPSによってあり方が変わるという論文が発表されたので紹介しよう*。
超解像顕微鏡法の一つのSMLM (single molecule localization microscopy, 一分子局在顕微鏡) **という、これも2014年にノーベル化学賞になったすごい顕微鏡技術を使って、TLR-4の分子を観察したのじゃ。この顕微鏡を使うと、電子顕微鏡では観察できない通常のタンパク質の状態を観察できるとのじゃ。その結果、TLR-4はMD2、CD14という共受容体(一緒にいてTLR-4を補佐するタンパク質)が無いと単量体(TLR分子は一つだけでいる)だけじゃが、共受容体があると単量体と二量体(TLR分子が2つでペアを作っている)がほぼ半分ずつ存在する。さらに、これに大腸菌のLPSが加わると二量体を作るそうじゃが、さらに面白いことに、ロドバクター・スフェロイデス(紅色非硫黄細菌の一種)という菌のLPSでは単量体のままとのことじゃ。つまり、LPS受容体のTLR-4は一緒にいるタンパク質や、LPSの種類によって、単量体や二量体になって細胞への情報伝達を制御しているということが示されたのじゃ。
LPSの種類によってはシグナルが強い、弱いなどあるが、その違いの一つは受容体であるTLR-4の側がLPSによって変わるということにも秘密があったのじゃな。
*: Science Signaling 2017: Vol. 10, Issue 503, eaan1308, doi: 10.1126/scisignal.aan1308 **: 確率論的に重ならずに分子にラベルした蛍光が光る状態を作り、蛍光の重心位置を計算し、それを多重的に観察して統合化した重心位置を描出することで分子を高解像度で観察する方法。
*: Yutaro Kobayashi, et al., PLOS one 13 (3): e01950008. (2018)
出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター