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ひげ博士のおはなし

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ひげ博士のおはなし
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第54回 アポトーシスとマクロファージの話

(2021年3月 No.54より)

皆さん、ひげ博士じゃ。我々は多くの細胞から作られておるが、細胞は死んでは、新たに分裂した細胞に置きかわりながら個体を維持しておるのじゃ。これは、個体発生でも、組織再生でも必要な過程じゃが、細胞はアポトーシスという死に方をして、マクロファージ(食細胞)によって食べられて排除されておるのじゃ。実は、これまで、アポトーシスした細胞は”見つけて!(Find me!)”シグナルを放出してマクロファージを引き寄せ、”食べて!(Eat me)”シグナルを出して効率的に貪食してもらう仕組みが知られていた(1)。近年、これに加えて”さよなら(Good bye)”シグナルも報告され、死にゆく細胞とマクロファージとの興味深い関係が示されておるので紹介しよう。
バージニア大学のNatureの報告では(2)、細胞がアポトーシスすると、パネキシン1というイオンチャンネル(物質を出入りさせる細胞膜にあるトンネル状のタンパク質)からヌクレオチドを放出してマクロファージを呼び寄せるだけでなく、スペルミジンやヌクレオチド(遺伝子を構成する分子)群も放出され、これらがマクロファージに働き、抗炎症作用、細胞増殖、組織再生を促す可能性を示しておる。アポトーシスした細胞がマクロファージに食べられて除去される前の最後の情報発信とも言えることから”Good-bye”シグナルと呼んでおるのじゃ。なかなか洒落たネーミングじゃのう。

(1) J Exp Med 207: 1807-1817 (2010) “Find-me and eat-me signals in apoptotic cell clearance: progress and conundrums”
(2) Nature 580: 130-135 (2020) “Metabolites released from apoptotic cells act as novel tissue messengers”

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター

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