特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク(LSIN)

マクロファージと糖脂質(LPS)の最新の話題

第11回
LPSで刺激されたTreg細胞とIL-10はIL-10を産生する好中球を誘導する。
(2015年12月 No.33より)

マクロファージとともに好中球は炎症部位で重要な働きを示すことはよく知られています。特に好中球は細菌などが侵入すると真っ先にその場所に集積して活性酸素や強い貪食活性を発揮するとともにマクロファージやリンパ球などを呼び寄せて炎症を強化して異物を排除する事が知られています。またマクロファージとは異なって炎症を誘導する働きだけを持つと考えられていました。そして炎症応答を終えると好中球はアポトーシスで死ぬと考えられていました。つまり好中球は炎症誘導や異物排除に特化した細胞とされていたのです。ところが、最近の研究によって、好中球が抗炎症性のIL-10を発現することが報告されるようになり、好中球は炎症誘導だけでなく炎症を鎮静する作用もあることが明らかになってきています。しかしながら好中球がどのような仕組みでIL-10を産生するのかは十分には分かっておらず議論が続いていました。この点について以下の論文では好中球がIL-10を産生して炎症を鎮静化する仕組みの一つとして制御性T細胞(Treg)とIL-10との働きで炎症を抑制するIL-10を産生することが報告されています。しかもその作用はLPSによって活性化されたTreg細胞が必要なことも併せて報告されています。

N Lewkowitz Cattin et.al
Mucosa Immunology Advance online publication, July 29 ,2015

この作用ですが、好中球を単にLPSで処理しただけでは得られず、またLPSで処理しないTreg細胞を用いても得られません。LPS処理したTreg細胞と好中球が接触することで初めて見られます。そしてIL-10を産生するように方向が変えられた好中球はさらにIL-10を産生することになり、すなわちLPS処理したTreg細胞と好中球が接触することは、好中球からのIL-10産生のポジティブフィードバックループを形成することになります。このことは、好中球は炎症を誘導するだけでなく条件によっては炎症を鎮静化するような機能を発揮する事、しかもこのような働きを好中球が行う場合にはLPSが必須であることはLPSの機能を理解する上で重要な示唆を与えています。つまりLPSは私どもの研究から例えばアトピー性皮膚炎の炎症状態を鎮静化するなど、これまでの常識とは異なる作用を示すことが示されていますが、このLPSの作用はTreg細胞を介した好中球を含む免疫細胞を介して発現する可能性を示しているからです。

 

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター