特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク(LSIN)

マクロファージと糖脂質(LPS)の最新の話題

第9回
LPSp(IP-PA1)を舌下に投与するとインフルエンザワクチンの効果を増強するとともに粘膜免疫に重要な働きをもつIgAが全身的に誘導される。
PLOS ONE DOI:10.1371/journal.pone.0126849 May 15,2015
Masahiro Fukasawa et.al
(2015年6月 No.31より)

私たちの研究グループはパントエア・アグロメランスから得られたLPS(IP-PA1)が経口・経皮投与で感染防御を含む種々の疾患の予防に役立つとともに健康増進にも有用であることについて報告してきました。この点に関連して、日東電工と大阪大学・京都大学の研究グループは、IP-PA1は舌下投与するとインフルエンザワクチンによるインフルエンザ抗体の産生を増強することを初めて報告しています。この作用はアジュバンド効果と言われます。舌下投与でワクチン効果を得ることは近年注目される方法ですが、安全なアジュバンドが必要です。アジュバンドとして臨床で使用されている物質はまだ少く、安全にしかも強いアジュバンド効果を持つ物質が求められています。研究グループではIP-PA1が経口投与で安全性が確認されていることからIP-PA1のアジュバンド効果に着目したことになります。そしてインフルエンザ抗原として臨床で使用されているスプリットワクチン(副反応の原因となる脂質を除いたもの)をIP-PA1とともに舌下に投与すると血中でのインフルエンザに対するIgGが産生されるだけでなく鼻腔粘膜のIgA抗体の産生も認められました。このIgA産生は抗原を皮下に投与した場合には認められません。

インフルエンザワクチンの皮下投与は一般な投与法ですが、ワクチンを皮下投与した動物群と、舌下投与した動物群にインフルエンザウイルスを感染させて生存率をみたところ、有意な差を持って、舌下投与した群の生存率が皮下投与した群を上回りました。このことは、IP-PA1とともに舌下投与したインフルエンザワクチンによって、全身的に粘膜免疫系を含む免疫が活性化され、インフルエンザ感染に対する抵抗性が獲得されたことを意味します。実際に、インフルエンザワクチンの代わりにオボアルブミンを使用した実験でも、IP-PA1とともに舌下投与した場合には肺や鼻腔、膣の粘膜上皮にオボアルブミン特異的なIgAが産生されることが確認されています。粘膜IgAは感染の予防に重要な働きを持つことが示されており、IP-PA1の舌下投与が粘膜免疫を活性化することが示されたことはIP-PA1の効果発現機構の解明に一歩踏み込んだ成果と考えられます。

本論文の著者らはこの研究を基盤としてIP-PA1を舌下(粘膜)投与するアジュバンドとして臨床応用するべく、今後サルなどを用いた研究を展開するとしています。

 

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター