特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク(LSIN)

マクロファージと糖脂質(LPS)の最新の話題

第8回
十全大補湯の有効成分はリポ多糖である。
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 25(2015) 466-469
D Montenegro et.al
(2015年3月 No.30より)

私たちに研究グループは、漢方薬にはリポ多糖が多く含まれていることを1992年代に公表して、漢方薬の効果の一端はリポ多糖が担っていることを示してきました。この考え方はリポ多糖の経口投与が漢方薬の機能の一部を担うとする点で、その当時としては斬新であったためか、大きな注目を集めることはありませんでした。しかし最近になって、漢方薬の効果はリポ多糖によるとする報告が相次いでいます。

紹介する報告では、漢方薬としては古くから知られ、がん患者やC型肝炎患者の免疫賦活効果があることで、広く医療に用いられている十全大補湯の主要成分がリポ多糖であることについて述べています。十全大補湯は免疫活性化機能を持ち安全性と有効性が理想的なバランスを持っているとして知られている漢方薬です。十全大補湯は約10種類のハーブの混合物ですが、有効成分が何かに関してはこれまで明確には分かっていませんでした。著者らは十全大補湯のマクロファージの活性化作用がリポ多糖のそれときわめてよく似ていることや、十全大補湯には植物の根由来の成分が多いことに着目して、これら成分の中で特に当帰に共存している微生物が効果を示すのではないかとの考えから、リポ多糖が有効成分の一つになっている可能性が高いという視点から分析を進めました。その結果、十全大補湯に含まれる当帰には519種類に及ぶ微生物が存在しているとともに、確かにリポ多糖が含まれており、このリポ多糖をポリミキシンBを用いて除くとマクロファージを活性化する能力が3分の1程度に低下することが示されています。また、彼らは実際に当帰に存在している微生物を調べて12種以上の微生物を同定して、中でも、土壌や水の中に多く存在しており、植物の根圏を形成している微生物でかつ植物の成長促進活性をもつラーネラ属のリポ多糖の凡その構造も調べています。私たち研究グループが着目しているパントエア属もまたラーネラ属の微生物と同様の特徴を持っています。

これらの結果を合わせて著者らは、免疫賦活効果がある漢方薬の効果には共存している微生物由来の成分が関係していること、この視点で漢方薬の有効成分を再調査することが重要であるとしています。

 

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター