特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク(LSIN)

マクロファージと糖脂質(LPS)の最新の話題

第7回
マクロファージ移植により肺の難病を治す。
Nature 514 (2014) 450-454、T Suzuki
(2014年12月 No.29より)

組織マクロファージの異常が場合によっては致命的な結果につながる疾患が知られています。そのような中の一つが、肺胞蛋白症と呼ばれる病気です。私たちの肺胞には、主にリン脂質からできている界面活性剤が存在しています。この界面活性剤は、肺胞の緊張を緩める働きがあり、呼吸を正常に行うために一定の量が存在することが必要です。多すぎても少なすぎても病気になりますが、多すぎて肺の呼吸機能に障害が生じる病気が肺胞蛋白症です。肺胞の海面活性剤の量の調節には、肺胞に存在する組織マクロファージである肺胞マクロファージが正常に機能することが必須な条件となっています。ですから肺胞蛋白症は肺胞マクロファージの機能が異常になることで発病します。この病気には、薬はありません。難病に指定されているくらいです。要するに、肺胞マクロファージの機能を正常化してやれば症状は治まる訳ですから、肺胞マクロファージがもし骨髄由来なら骨髄移植をすれば、回復する疾患である可能性があります。しかし骨髄移植は危険です。

さて、この肺胞蛋白症は肺胞マクロファージの異常が原因と書きましが、もし肺胞マクロファージが骨髄に由来するのでないならば、肺そのものを標的とした新しい治療法が考えられるのではないかと言うことになります。

Nature 514 (2014) 450-454に、T Suzukiらは肺胞を直接の標的とした肺胞マクロファージ移植実験の結果を発表しています。この実験では遺伝的に肺胞蛋白症である動物に機能が正常なマクロファージを自然呼吸によって肺胞に吸引させ、その治療効果を調べています。治療効果は劇的で肺胞の機能不全はほぼ完全に回復しており、一回の治療で効果は1年以上継続して続いています。つまり、投与したマクロファージは肺胞マクロファージとして機能して、肺胞局所で分裂増殖を行っているので、正常な肺胞機能が長期間にわたって維持されることになります。

組織マクロファージの機能異常や機能低下が疾患に繋がったり、また組織マクロファージの機能維持が健康維持にも重要な意義を持つことが近年続々と発見されてきています。そこで、組織に直接マクロファージを移植するという方法は、今後難病の新しい治療方法としてクローズアップされることになると考えられます。

 

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター