特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク(LSIN)

マクロファージと糖脂質(LPS)の最新の話題

第4回
腸内細菌は制ガン療法の治療効果を高める。
Noriho lide et al Science 342. 967-970(2013)
(2014年3月 No.26より)

腸内細菌が複数の抗腫瘍療法の治療効果に積極的に関係することが報告されました。

報告では抗生物質を投与するマウスの群と投与しないマウスの群を用いています。抗生物質を投与した群では腸内細菌が死滅します。その様な動物に癌細胞を移植し、一定期間増殖させてから、抗腫瘍効果のメカニズムが異なる①CpG DNA(TLR9を介して自然免疫を刺激する)、と抗IL10受容体抗体(IL10の持つ抗炎症作用を抑制する②オキザロプラチン(シスプラチンの誘導体で抗腫瘍効果には活性酸素種(ROS)がプラチナ化合物によるDNA損傷とアポトーシスに重要な役割を果たす)の2種類の治療法で抗腫瘍効果や生存期間を調べました。そうすると、①、②いずれの治療の場合も腸内細菌を死滅させた群では治療効果が認められなくなりました。ところが、腸内細菌が死滅した群にLPSを経口投与すると、①の治療法では抗生物質を投与した群でもTNFの誘導能やTNF産生細胞の数が回復して治療効果が認められる様になりました。しかしLPSの受容体であるTLR4を欠損した動物では治療効果は回復しませんでした。これらの事から、①の治療法では、微生物由来の産物が一部はTLR4を介して、直接あるいは間接的に癌組織の微小環境に起こる炎症応答を制御することで抗腫瘍効果が得られていると考えられます。

②では、マクロファージ系細胞を除くと治療効果が低くなることがわかりました。抗生物質を投与して腸内細菌が死滅した群ではオキザロプラチンの治療効果が低くなるのはマクロファージ系細胞からのROS産生が阻害されることに一因があると著者らは考えています。

また、どの様な腸内細菌が抗腫瘍効果に関与するかを①の治療法で調べると、ある種のグラム陰性菌やグラム陽性菌が治療効果を高めることに関係することがわかりました。一方で、ある種の乳酸菌はTNFの産生を抑制するなど、むしろ治療効果を低下させるとの結果が得られています。また治療効果を高めるグラム陰性菌を抗生物質を投与する前に与えておくと、抗腫瘍効果は低下しないこともわかりました。

腸内細菌がどの様にして恒常性制御と関係するかは近年大きな注目を集める研究領域となり、これから解析が進むと期待されます。この点について、この報告では、抗腫瘍療法の効果を最大化するためには正常な腸内細菌叢が必要であること。そしてこの効果は腸内細菌叢が癌組織やその周辺の微小環境に存在するマクロファージ系細胞の多様な活性化を調節することにより得られる可能性が高いとしています。

以上のことから著者らは、いろいろな抗腫瘍療法を行う際に、腸内細菌叢を調節することで、より高い抗腫瘍効果を期待できるのではないかと考察しています。

 

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター