特定非営利活動法人 環瀬戸内自然免疫ネットワーク(LSIN)

ひげ博士の最新免疫学講座

第3回
適度に活性化したマクロファージはすい臓ガンに対する抗腫瘍興亜に重要
(2013年12月 No.25より)

腫瘍組織に存在するマクロファージはTumor Associated Macrophage(TAM)と呼ばれますが、抗腫瘍に働くのか、それとも腫瘍増殖を助けるのか、という点については必ずしも統一した見解が得られているわけではありません。もしかするとマクロファージの質や腫瘍の種類によってもマクロファージと腫瘍の関係は異なる可能性があります。

最近、Cancer Cell誌に、TAMが腫瘍の生育を助けていると考えられるすい臓ガンを用いて、低線量の放射線照射で活性化したマクロファージが強い抗腫瘍効果を誘導するという報告がなされました(Cancer Cell 24, Nov 11,2013 559-561)。低線量の放射線照射によりTAMは腫瘍血管の性格を変化させることや、腫瘍を攻撃するNO(一酸化窒素:癌細胞やウイルス、細菌などを殺す分子)を産生することで、細胞傷害性T細胞と相乗的に働いてすい臓がん動物の生存期間を延長させるということです。またこの抗腫瘍効果は腹腔から得たマクロファージに低線量の放射線照射を行って、その後動物に投与しても得られました。そして抗腫瘍効果には低線量の放射線照射をしたマクロファージが必須であることも報告されています。

ところで、これまでの常識では、NOはどちらかと言えば免疫抑制に働き、腫瘍に対する免疫療法の効果を弱めるとされていました。しかし、この報告では、まだ理由は明らかではありませんが、低用量の放射線照射で、抗腫瘍効果が得られる際にはNOが必須の働きをしていることが実験的に確かめられています。これらのことから、論文ではマクロファージを適度に活性化することが、免疫療法を成功させる上で極めて重要なカギを握っていると考察されています。

どの程度の線量が最も効果が高いのかとか、マクロファージの適正な活性化の状態とはなにか、という重要な課題はあるものの、低線量の放射線がTAMの性格を180度転換させ、あるいはマクロファージを適正に活性化して腫瘍ばかりか腫瘍組織を攻撃する優れた武器になるとの発見は、実際に放射線療法を行う上でも今後重要なポイントになると思われます。また本論文はマクロファージには多面的な活性化のフェーズがあり、適正な活性化は抗腫瘍効果にも繋がると言う点で、マクロファージの活性を操作する技術ががん治療の柱になりうるということを示した点でも、興味深い研究成果です。

 

出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター