ひげ博士のホットレポート ─最新免疫講座─
目次
- 第35回 脳の発達と腸内フローラの話
- 第34回 歯周病菌の話
- 第33回 抗生物質とアトピーの話
- 第32回 抗炎症の仕組みの話
- 第31回 人工甘味料と腸内細菌叢の話
- 第30回 食事と抗菌作用の話
- 第29回 抗生物質の話
- 第28回 ステロイドの話
- 第27回 高血圧の話
- 第26回 iPS細胞の話
- 第25回 受精卵の話
- 第24回 腸内細菌の話
- 第23回 神経細胞の話
- 第22回 アルツハイマーの話
- 第21回 発熱の話
- 第20回 がん免疫の話
- 第19回 衛生仮説の話
- 第18回 乳酸菌との話
- 第17回 ノーベル賞の話
- 第16回 放射線の話
- 第15回 肝臓の話
- 第14回 火傷の話
- 第13回 抗菌物質の話
- 第12回 植物の話
- 第11回 腸の話
- 第10回 骨粗しょう症の話
- 第9回 テロメアの話
- 第8回 免疫進化の話
- 第7回 貪食の話
- 第6回 耐性菌の話
- 第5回 マクロファージの話
- 第4回 メタボの話
- 第3回 アレルギーの話
- 第2回 風邪予防の話
- 第1回 自然免疫の話
第25回 受精卵の話(2013年12月 No.25より)
皆さん。ひげ博士じゃ。マクロファージはばい菌の排除だけでなく、炎症を鎮めたり、キズの再生などもしておる。それだけじゃないぞ、受精して赤ちゃんが生まれてくる間も大事な役割を担っておるのじゃ。胎児の一時期に指の間に水かきが出来るが消えていくのが観察されるが、これもマクロファージが働いておる。今日は、受精卵の着床にマクロファージが必要なことが、オーストラリアのグループの研究により明らかにされたので紹介しよう。
このグループでは、米国で開発された、ジフテリアトキシンという毒素に結合してしまう特殊なマクロファージにしたマウスを使うことで、一時的にマクロファージを消去できるようにしてあるのじゃ。妊娠したマウスからマクロファージを除くと、なんと、子供が出来なかったのじゃな。
この研究では、マクロファージの働きとして黄体を育てる事を見つけておる。排卵すると黄体という卵巣の一部が大きくなり、そこから黄体ホルモンが出て、受精卵が着床できるようにしているが、マクロファージは黄体を大きくしてホルモンが作れるようにしていたのじゃ。マクロファージの役割は異物排除だけでなく、妊娠にも必須で、マクロファージの働きは本当にすごいのう。
文献: Alison S. Care, et al. Macrophages regulate corpus luteum development during embryo implantation in mice. J. Clin. Invest., 123: 3472-87 (2013).
出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター