ひげ博士のホットレポート ─最新免疫講座─
目次
- 第35回 脳の発達と腸内フローラの話
- 第34回 歯周病菌の話
- 第33回 抗生物質とアトピーの話
- 第32回 抗炎症の仕組みの話
- 第31回 人工甘味料と腸内細菌叢の話
- 第30回 食事と抗菌作用の話
- 第29回 抗生物質の話
- 第28回 ステロイドの話
- 第27回 高血圧の話
- 第26回 iPS細胞の話
- 第25回 受精卵の話
- 第24回 腸内細菌の話
- 第23回 神経細胞の話
- 第22回 アルツハイマーの話
- 第21回 発熱の話
- 第20回 がん免疫の話
- 第19回 衛生仮説の話
- 第18回 乳酸菌との話
- 第17回 ノーベル賞の話
- 第16回 放射線の話
- 第15回 肝臓の話
- 第14回 火傷の話
- 第13回 抗菌物質の話
- 第12回 植物の話
- 第11回 腸の話
- 第10回 骨粗しょう症の話
- 第9回 テロメアの話
- 第8回 免疫進化の話
- 第7回 貪食の話
- 第6回 耐性菌の話
- 第5回 マクロファージの話
- 第4回 メタボの話
- 第3回 アレルギーの話
- 第2回 風邪予防の話
- 第1回 自然免疫の話
第22回 アルツハイマーの話(2013年3月 No.22より)
皆さん。ひげ博士じゃ。本日は、アルツハイマー型認知症を予防する話をしよう。
アルツハイマー病はアミロイドβという小さな不溶性タンパク質が脳にたまって、いわゆる老人斑ができて、神経細胞が死んでしまい、だんだんと脳が萎縮していく病気じゃのう。ところで、脳には、マイクログリアと呼ばれている組織マクロファージがおって、神経細胞の維持に関わっておる。実は、アミロイドβは誰の脳にも出来ているのだが、これをマイクログリアがせっせと食べて除くことで、アミロイドβがたまるのを防いでおるのじゃな。
さて、最近の研究で、ついに糖脂質がアルツハイマー病の予防に有用なことが報告されたので、紹介しよう*。低分子で活性の低い糖脂質(モノフォスフォリルリピドA: MPL)を注射すると、糖脂質受容体のTLR4を経由して、マイルドにマクロファージの活性化を誘導できる。アミロイドβが出来やすいように遺伝子操作したマウスに、このMPLを腹腔内投与したところ、マイクログリアがアミロイドβを貪食する能力が高まったのじゃ。当然、老人斑が脳で作られるのを抑制されて、学習障害も抑制されることが確認されたんじゃ。やっぱり、糖脂質をうまく使えば、いろいろな病気を予防できるのじゃのう。
*: ProNAS, 110: 1941-1946 (2013).
出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター