ひげ博士のホットレポート ─最新免疫講座─
目次
- 第35回 脳の発達と腸内フローラの話
- 第34回 歯周病菌の話
- 第33回 抗生物質とアトピーの話
- 第32回 抗炎症の仕組みの話
- 第31回 人工甘味料と腸内細菌叢の話
- 第30回 食事と抗菌作用の話
- 第29回 抗生物質の話
- 第28回 ステロイドの話
- 第27回 高血圧の話
- 第26回 iPS細胞の話
- 第25回 受精卵の話
- 第24回 腸内細菌の話
- 第23回 神経細胞の話
- 第22回 アルツハイマーの話
- 第21回 発熱の話
- 第20回 がん免疫の話
- 第19回 衛生仮説の話
- 第18回 乳酸菌との話
- 第17回 ノーベル賞の話
- 第16回 放射線の話
- 第15回 肝臓の話
- 第14回 火傷の話
- 第13回 抗菌物質の話
- 第12回 植物の話
- 第11回 腸の話
- 第10回 骨粗しょう症の話
- 第9回 テロメアの話
- 第8回 免疫進化の話
- 第7回 貪食の話
- 第6回 耐性菌の話
- 第5回 マクロファージの話
- 第4回 メタボの話
- 第3回 アレルギーの話
- 第2回 風邪予防の話
- 第1回 自然免疫の話
第14回 火傷の話(2011年3月 No.14より)
皆さん。ひげ博士じゃ。今日もグラム陰性菌の糖脂質(リポ多糖:LPS)が病原菌を防ぐ働きを紹介しよう*1。重症のやけを負うと、感染症になり、それで亡なることが一番多いが、それを、糖脂質が防いでくれるかもしれないのじゃ。
やけどになると、皮膚のバリヤーがやられて細菌侵入の危機にさらされるが、実は皮膚だけではない。やけどのような強いストレスが加わると腸からの細菌の侵入が80倍も増えるのじゃ。だから、抗生物質を飲んで感染症を予防するのじゃが、抗生物質を飲むと腸内共生細菌も当然やられてしまい、なんと、腸から侵入する細菌数がほとんど減らない。それどころか、抗生物質を飲むと、体にいるマクロファージの活性が低下することがわかったのじゃ。その理由は、抗生物質によって腸内細菌が少なくなったために、共生細菌に由来する糖脂質量も減り、体の自然免疫に充分な情報が与えられなくなったためと考えられておる。
そこで、糖脂質サプリメントの出番じゃ。やけどを負った動物に抗生物質と一緒に糖脂質を飲むと、腸から糖脂質の情報が伝達され、体の中のマクロファージの活性化が維持され、腸管から侵入する細菌の量を増やさないことが報告されておる*1。抗生物質を飲むときにはうまく糖脂質を摂るのが、賢いということがまたしてもわかったのう*2。
*1: Journal of Biomedical Science, 2010, 17: 48, Doi: 10.1186/1423-0127-17-48
*2:ひげ博士のホットレポートNo.6 (LSIN Newsletter No. 13, 2009年3月)参照
出典:特定非営利活動法人環瀬戸内自然免疫ネットワーク発行ニュースレター